少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直し
- この制度を利用した節税スキームの封じ込めが目的か -
【令和4年度税制改正項目】
令和4年度税制改正大綱(令和3年12月24日閣議決定)において、ほとんどの法人が実務で活用している少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の適用対象から貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものを除外する見直しが次のとおり盛り込まれ、令和4年3月22日に参議院本会議で可決され成立をしました。
令和4年4月1日以後に取得等するものから適用されますので、対象資産の取得時期によりますが令和4年4月決算法人から注意が必要です。
(令和4年度税制改正大綱・抜粋)
6 円滑・適正な納税のための環境整備
(4) 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外する(所得税についても同様とする。)。
(5) 一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産を除外する(所得税についても同様とする。)。
8 その他の租税特別措置
(8) 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産を除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(改正の背景)
法人が当期の多額の利益を圧縮することを目的として、法人自らが行う事業で利用しない少額な資産(10万円に満たない建築足場材、ドローンなど)を大量に取得し、その取得資産を貸付けの用(オペレーティングリース契約)に供することにより、上記の少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度を適用し当期の損金に算入する一方で、貸付先からの賃貸料収入・賃貸後の売却益は当期以後の複数年度(例えば5年間)の益金に算入する節税スキームが課税上問題とされた。
(少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の概要)
① 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度(法令133)(いわゆる10万円未満基準)
使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満の減価償却資産(所有権移転外リース資産を除く。)を法人が事業の用に供し即時償却をした場合には、これを認める。
② 一括償却資産の損金算入制度(法令133の2)(いわゆる20万円未満基準)
減価償却資産でその取得価額が20万円未満であるもの(所有権移転外リース資産及び上記①の適用を受ける資産を除く。)を事業の用に供した場合には、その減価償却資産の取得価額の合計額につき、原則として3年間での均等償却を認める。
③ 措置法の少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度(措法67の5)(いわゆる30万円未満基準)
中小企業者等(適用除外事業者を除く。常時従業員数が500人以下に限る。)である青色申告法人が、令和6年3月31日までの間に取得等をし、その法人の事業の用に供した減価償却資産で取得価額が10万円以上30万円未満のもの(上記②の適用を受ける資産等を除く。)を有する場合において、その減価償却資産の取得価額に相当する金額について即時償却をしたときは、原則としてその即時償却をした金額について300万円を上限としてこれを認める。
出典:TKC税務研究所 一部改変